地球環境テクノロジーは、廃棄物処理施設技術管理士が都市生活における資源再生および地球環境保全を図る技術研究に取り組んでいます。

ごみ処理の現状

1. ごみ焼却へのこだわり

日本がごみ焼却をする理由は、国土の広い国は、直接埋立てが主流ですが、国土の狭い日本は、直接埋立てでなく、焼却処理して、灰と燃え殻にすることで、 ごみの容積を減らす(減容化)必要があるとして、国民に長きにわたり植え付けてきた経緯からであります。

しかしながら、経済の高度成長に比して、ごみ焼却施設の建設が急激に増え、平成元年には、日本全体で1,941ヶ所であり、灰と燃え殻の最終処分場も同じく増え、 1施設当り処理能力を100t/日以上の大型化とした連続運転施設とするため、全国的に市町村合併もされた時期がありました。

高度成長経済が急速に進み、国民のライフスタイル、廃棄されるごみ量と質も以前に比べ大きく変化してきましたが、一向に焼却一辺倒のごみ行政にされたままで、 各自治体も困って、“脱ごみ焼却”をごみ処理の基本方針とする市町村も、ここのところ増えているのに何故、国は動けないのか。

そのスパイラルな状況から抜け出せない本当の理由は、何なのか?

平成元年~35年以上長きにわたり、全国の自治体(市町村等)のごみ処理施設建設整備に係わるコンサルタント業務(一般廃棄物処理基本計画、施設基本設計、施設整備計画、 ごみ処理施設建設工事施工監理業務、各種調査業務等)に携わってきた経験と知見から考察した。

その結果、以前から解っていたことが明確になったこと。それは、長きにわたり、ごみ処理方式をごみ焼却とすることで、ごみピット・プラットホーム・気密建屋、 そびえ立つ煙突設備の土木建築、熱処理設備、排ガス処理設備、発電設備付帯の過剰設計の高額プラント設備とすることができることで経済界(大手ゼネコン、大手プラントメーカ) に1/3もの国庫補助金を流すことができ、国として財団法人、社団法人等の省庁の関連法人を設置して官庁の天下り先資金確保が、その理由であることは、 国庫補助金制度等及び関連法人へのプラントメーカからの援助金制度で解ります。

本文を作成中の令和5年7月時点においても平成18年の報道発表資料の「廃棄物処理施設建設工事の入札・契約の手引き」が環境省ホームページに掲載し続けていることでも解ります。

資料-1:PDFファイル「廃棄物処理施設建設工事の入札・契約の手引き(平成18年)」

2. ごみ焼却プラントの異様な姿

ごみ焼却は、ごみを燃焼させ、廃ガス及び高温蒸気(水の1,700倍膨張)及び焼却灰・燃え殻にしてしまう処理・処分方法です。ごみ焼却施設のフローを図―5に示します。


図-5 ごみ焼却の処理フロー(参考例)

3. ごみ焼却と地球温暖化

令和3年度の全国ごみ総排出量は、40,950,000t/年、総処理量が39,420,000t/年、その内直接焼却量は、31,491,000t/年で、総処理量の約79.9%になり、1日当りの焼却処理量は、86,277t/日です。
ごみ焼却施設の煙突から排出される排ガス量は、燃焼ガス量と加算される水蒸気量で求められます。

  1. 燃焼ガス量は、簡易計算で算出すると、1t当り7,290m³/日とすると、628,952,040m³/日です。
  2. 排気ガスに含まれる水分量は、17,946t/日と算出され、水蒸気排出量は、30,508,200m³/日です。
  3. 煙突から排出される量は、a+b=659,460,240m³/日で、東京ドーム容積の約557杯分です。
    実際は、燃焼用空気(湿分有)+プラ・紙等が焼却された排ガス+排熱、更に燃焼ガス(850℃~1,500℃)を急冷するのに必要な冷却水も加わるので、その2倍として計算すると1,114杯/日と算出され、1ヶ月当たりですと、約3万3,400杯分にもなるから驚ですが、意識できるでしょうか?
    日本国内の上空に、そんなことをしているのを気づかせない(白煙防止装置など設置で何も排気していないかのように見せている)ことを意識できるでしょうか。

(算出根拠)

  1. 排ガス量=焼却処理量の1t当り換算式ガス量7,290m³/日で算出すると、86,277t/日×7,290m³/日=628,952,040m³/日と算出されます。
  2. 燃焼ガス量は、燃焼用空気量+燃焼ガス量(湿りガス量)で求めるがそれらの合算係数で求める。
    厨芥類の量=総焼却処理量×32%で計算すると、 86,277t×32%=27,609t/日
    水分量=(厨芥類の量27,609t/日)×65%=17,946t/日=17,946m³/日
    気化すると約1,700倍に膨張するので17,946m³/日×1,700倍=30,508,200m³/日と算出されます。

4. ごみピット&クレーン方式

ごみ排出者の私たちには、「分ければ資源、混ぜれば“ごみ”になる」と言いながら、収集したごみをピットに投入して、攪拌(混ぜている)しているのは、矛盾している。

ごみピットは、ごみの受入貯槽であるが、半地下構造としたのは、上部からの投入・堆積させることで、下部に古いごみが残り腐敗することを見越して、 上部からクレーンでつかみ取る方式にしたと推測される。仮に、ごみピットを地上式とした底部排出のごみ貯留槽とした場合、先に投入されたごみから取出すことになり、 ごみが腐敗すること無く、ごみの種類・組成別に処理ラインが組めることになり、燃やすごみが無くなります。

そのような事態にならないよう、ごみ受入供給設備は、ピット&クレーン方式にしている。

ごみピットの内部状況を図―6、地上式ごみ貯留槽(特許申請済)を図-7に示します。


図―6 ごみピットの内部状況


図―7 地上式ごみ受入貯留槽(特許審査請求したもの)
記)拒絶査定理由は、「下部排出形状が米びつと同じ=新規性なし➡反論済」

5. ごみ焼却とリサイクル

世界規模での地球環境保全に関する国際協定が採択される中、日本のごみ処理事業の現実を観ると異常なまでに、ごみ焼却を主流としたごみ処理の実態が有り、 ごみ焼却もサーマルリサイクル(和製英語)とした誤ったリサイクルの考え方も生み出し、定着されています。

サーマルリサイクルは、英語では「Energy Recovery(エネルギー回収)」や「Thermal recovery(熱回収)」と呼ばれており、リサイクルの概念に「燃焼」を 含めてはいない。

令和3年度のごみ総処理量の内、直接焼却された量は、3,149万トン、直接焼却率は、79.9%となっており、10年間ほぼ横ばいで推移しています。

リサイクル関連法として、資源有効利用促進法(1991年)、容器包装リサイクル法(1995年)が制定され、各自治体のごみ処理事業が実施されてきましたが、 ごみ焼却を主流としたごみ処理事業とされたため、直接焼却率が30年前から現在まで殆ど横ばいの73%以上~80%で推移しているのは何を示しているのでしょうか。

それは、焼却処理がリサイクル施策を推進するための弊害になっているからに他なりません。
日本のごみ総処理量の処理形態別推移を図-4に示します。


図-4 日本のごみ処理状況(令和3年度)
(出典:環境省、令和3年度一般廃棄物処理事業実態調査の結果より)


・ごみ処理状況(令和3年度)

6. 容器包装ごみ回収要件

環境省は、「ごみ処理基本計画策定指針」において、分別して収集するとした、ごみの種類及び分別の区分の中で、「洗浄処理した容器包装ごみは、 資源ごみとして回収する、洗浄してないものは、分別収集の対象から適切に除去することが必要である」としています。

「ごみ処理基本計画策定指針(環境省:平成28年9月)より一部抜粋を下記に示す。
個別品目の分別収集

容器包装廃棄物の分別収集は、容器包装リサイクル法の基本方針において、市町村の取組みとして「住民に対して分別及び洗浄の徹底について周知を行ない、 洗浄されていない容器包装廃棄物や、容器包装以外の物が付着し、又は混入した容器包装廃棄物については収集を見合わせ、 住民に対し分別排出の必要性について説明すること等の措置を講ずることが必要である」こと、消費者の取組みとして「容器包装の種類に応じた分別、 洗浄及び減容化を一層徹底し、付着した汚れの洗浄が困難な物については、容器包装に係わる分別収集の対象から適切に除去することが必要である」ことが 明記されており、この規定に則して行なうものとする。

なお、このような規定を設けて、ごみの排出者にごみ資源化の労力を求め、ごみ排出段階での洗浄処理は、各家庭の水道・ガス使用量及び下水道への負荷分が、 反って環境負荷増大となることも承知でのことでしょうか。 

● 洗浄処理すると燃やすごみが無くなる!

ごみ排出段階での洗浄処理は、逆に環境負荷増大となるので、ごみ分別に留め、処理施設で洗浄処理することに改めると、付着物等が分離され資源化可能状態になるので、焼却する必要が無くなり、 1番の問題であったプラスチックごみも再資源化原料にできると同時に、生ごみ・厨芥類、雑紙類もバイオマス資源化が可能となります。

● リサイクル神話

ごみ減量化を推進するため、行政指導で業者が実施しているレジ袋を有料配布は、反ってごみを増やしている実態が有ります。それは、無料配布していたころから買い物でもらったレジ袋は、 買った物を袋から出した後は、ごみ袋として使用していたが、ごみ有料化後は、自治体で販売している有料ごみ袋にごみを入れて排出しないとならないので、せっかく商店等で買った有料レジ袋は、 ごみ袋に使えず、ただのゴミとして自治体等の有料ごみ袋に入れることになっている。

さらにリサイクルの誤った考え方で、製品を作った後のリサイクルのことを考えていない真逆のことをしている業者が、“この袋はサトウキビ由来のバイオマス成分を25%含んだレジ袋です。「CO2排出量削減」や「石油資源の節約」に貢献しています”と。

このように無知の業者があたかも環境保護に貢献しているかのように見せかけて商売をしている事例が多々見受けられるが、バイオマス成分100%のレジ袋ならまだ良いが中途半端(25%)に混入したレジ袋は、もはやリサイクルできず焼却処分するしかない。バイオマスを混入していない従来のプラ製レジ袋の方が プッラスチック資源化原料としてリサイクルできます。

また、行政が実施しているごみの有料化(有料ごみ袋での排出限定)は、ごみ排出量削減を目的として実施されていますが、自治体等の担当者は、ごみ有料化を実施した後は、以前よりごみ量が減ったので、 その効果が出ていると感じていると。しかしながら有料化したから、排出していたごみが、何処かに消えた、もしくは、消費を減らした?そんなことは無く、 わざわざ有料ゴミ袋を買って出すのが面倒くさいと不法投棄している者がいる実態も有ります。(畑にコンビニ弁当ごみ、牛丼弁当ごみ等々が散乱しカラスが突き回していた)

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